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高校まで暮らしていた家にちゃんとお別れを言っていない自分に夢の中で気づく
そこにはもうすっかり新しい人が住んでいて、、、
お願いして中を、せめて柱だけでもさわりたいという欲求があって、
でもそんなの突然行ったらびっくりするだろうし、
もう二度とあの家に入ることが、
育ったあの家に入ることができないと思うと
泣きながら
目が覚めていた
そんな気持ちがあった自分に
とても驚いた
こどもの頃歩いた道を
歩くだけでもしてみようかなと思った

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雨がしとしとと一月の風をのせて降っている
アクセルを踏み込んで
数年ぶりにこの街に来た
僕が育ったこの街に

近所のスーパーの駐車場に車をとめて
かつて見慣れていた住宅街を
安物のビニール傘をさしてパシャパシャと歩く

スーパーの自転車置き場のビニールの屋根はなくなり、骨組みだけになっていた

近所のトタンで囲われた駐車場をすぎると、僕が育った家が見えてきた

カイガラムシのよくついた石垣の花壇はすっかり消えて
よく鳥を見た庭の木もばっさり抜かれて
かつて僕が住んだ家の庭先に知らない家族の洗濯物が干されていた

蛙やザリガニをよく捕った田んぼは整地され
大きなマンションが建設中だった

イトミミズがよく群がったあぜ道を抜け
公民館でタバコを一服する

そういえば向かいの家に知らないおばあさんが庭先に座っていたことにふと気づく

これで最後にしようと、
ここはもう「ただいま」を言う家ではないことを確認しようと
もう一度育った家の前にひとり傘をさしてみる

そこには新しい家族が住み
最初はだめ元で家の中を見せてもらおうと思ったが
変質者に間違われるのも嫌なので
足をすすめる

ふと向かいの家に目をやると
すっかり老いた隣のおじさんとおばさんがいた
おじさんはおじいさんに
おばさんは知らないおばあさんになっていた

ちゃんとサヨナラもせず
バラバラになった家族のこともあるけれど
今ようやくこの家にサヨナラを言えた気がした

もう二度と来ることもないだろう
今来ても残るのは
言葉にした感情で言うと
切なさ、悲しみ、孤独感、、、
残った物質はこの雨だれのような涙の跡だけだったから

それでも僕の心の中には
あの頃の記憶がずっとあって
確かにここが育った街なんだと思う

よくお祭りをした神社の境内で
あの頃の僕の姿を見たような気がした

家に帰り
「今日、育った街に行ったんだ」
と、彼女に言ってみるが
彼女は特に何を聞くでもなく、
僕も、特に心の中の感情を言わなかった

また新しい生活が始まる

by changen | 2009-08-28 01:40  

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